水虫に似た症状の皮膚病

水虫の診断は症状を見るだけでは不可能です

見た目の症状から水虫は診断できません

水虫の症状というと、痒みや皮膚のカサカサ、ジュクジュクなどが典型です。たとえば、わたしが水虫だったときの患部の写真はこんな感じ。

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これは治療前の状態です。見るからに水虫ですね。

ところで、同じように足の指の間の皮膚がジュクジュクになったり、痒くなったりしても、そのすべてが水虫とは限りません。

たとえば、この画像を見てください。現在のわたしの左足の指の間の写真です。

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指の間が白くふやけて、皮膚が剥けている。見た目は水虫の症状です。

てっきり水虫が再発したとおもって皮膚科で検査をしてもらったところ、これは水虫ではありませんでした。皮膚科の専門医が何度も顕微鏡で検査しましたが、水虫の原因菌である白癬菌は発見できませんでした。

水虫治療の専門家である皮膚科医の著書に、次のような記述があります。

水虫だと思って来院した患者さんの2~3人に1人は、水虫ではない別の病気だといわれています。当院でも調べてみましたところ、初診の時に「水虫なんです」といってきた人の約半数は水虫ではありませんでした。

症状を見ただけでは水虫と他の皮膚病を判別できないのは、実は、皮膚科の専門医でも同じです。この医師は次のように書いています。

私は皮膚科の学会や医師会などで時々講演をたのまれますが、その時によく水虫とその他の病気との「境界線当てクイズ」をします。「水虫を目で見ただけで診断がつけられるのか」つまり「他の疾患と鑑別できるのか」ということを、一見似たようなスライドを何枚か並べて、出席した先生に答えてもらうのです。ほとんどの場合、なかなか当てることができません。真菌症の専門家でさえ、目で見ただけで鑑別することは難しいのです。

私は皮膚科医になって25年以上たちますが、いまだに目で見ただけで診断する術も勇気も持ち合わせていません。

水虫は1ケ月で治せる」(現代書林)

専門家でもこうなのですから、素人判断ではなおさら誤診の可能性が高くなります。

水虫と似た症状の皮膚病

水虫と似た症状の皮膚病には、たとえば次のようなものがあります。

汗疱

手足の指に、小さな水疱がたくさんできます。うすく皮が向ける場合もあります。足にできると、水虫とそっくりの症状を呈します。

汗疱の症状の画像検索

異汗性湿疹

皮膚に発疹ができ、水虫そっくりの症状を呈します。強い痒みがあり、足の指の間が白くふやけて、ジュクジュクになります。異汗性発疹と水虫を目で見て区別することは、水虫の専門医でも不可能といわれます。

異汗性発疹の症状の画像検索

以上の2つは、汗が原因のひとつになっています。したがって、その患部に水虫薬を塗ったりすると皮膚が蒸れて悪化する可能性もあります。

カンジダ

一種のカビです。指の間が白くふやけたり、皮が向けたりします。指の間に感染すると、水虫のように指の股がぱっくり裂けることもあります。見た目の症状は似ていますが、白癬菌が原因の水虫とは異なります。

カンジダの症状の画像検索

かぶれ

何らかの刺激によって、皮膚がかぶれている場合です。これも足の指の間にできれば、素人目には水虫のように見えます。

かぶれの症状の画像検索

ここに挙げた以外にも、さまざまな病気が水虫に似た症状を呈します。これらの病気に、白癬菌を殺菌するための薬(つまり水虫薬)を塗っても、なんら症状は改善されません。白癬菌が原因の病気ではないのだから当然です。

症状が改善されないだけならまだしも、かえって悪化させることにもなりかねません。

爪水虫に似た症状の皮膚病

爪水虫も、目で見ただけではわかりません。素人判断は誤診の危険性が高すぎます。爪水虫に似た症状の皮膚病には、たとえば次のようなものがあります。

乾癬

発疹ができ、白っぽいフケのようなものがボロボロ剥がれてきます。症状の表れ方によっては、爪水虫にそっくりの外観を呈します。

乾癬の症状の画像検索

カンジダ

爪の間にカビ(酵母カビ)の菌が入り込み、繁殖して、水虫に似た症状を引き起こします。

爪のカンジダの症状の画像検索

爪甲剥離症

爪の下の皮膚が剥がれる病気です。白っぽくなるので、見た目は爪水虫に似ています。

爪甲剥離症の症状の画像検索

これらの病気に対して爪水虫の治療薬を使っても、当然ながら治療の効果はありません。かえって悪化させる場合もあります。

皮膚科で検査を受けましょう

水虫かなと思ったら、皮膚科で検査を受けましょう。ネットで水虫の患部の画像を検索して、それと自分の足の症状を見比べて、かりに似ていたとしても、水虫かどうかはわかりません。前述のとおり、皮膚科の専門医でも、顕微鏡検査をしなければ水虫の診断はできません。

水虫ではないのに水虫薬を買ってしまったら、その薬代は無駄金になります。水虫薬は安くても一本千円程度はします。

皮膚科で水虫の検査をしてもらう費用は、初診料込みで千数百円です。水虫薬一本分の出費で、顕微鏡を使った白癬菌の検査をしてもらえます。それで、無駄金を払わずに済みます。

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もしも実際に水虫であると診断されたら、そのあとは自分で薬を入手して治療してもかまわないのです。しかし、最初のところだけは、自分でやるのは無理です。皮膚科の専門医さえ、目で症状をみただけでは診断できないのですから。

「もしかして水虫かな」と思ったら、とりあえず皮膚科に行って検査してもらう。これを是非実行してください。